COLUMN
10年後のあなたが変わるFP情報
2025.09.30
ライフプラン
テーマ:
「そのポチッ、ちょっと待って」(2025年9号)
10年後のあなたが変わるFP情報
こんにちは。ファイナンシャルプランナーの下山千佳子です。
私はこれまで20年間で2,000件以上のご相談を受け、数多くのライフプランシミュレーションを作成してきました。その中で最近特に感じるのは、昔と比べて「お金の消え方」が大きく変わってきているということです。
「えっ、なんでお金がないの?」
ある50歳のご夫婦とのライフプラン相談。
食費や光熱費、保険料、旅行費用、車の維持費…。
2時間かけて丁寧に支出を洗い出した結果、年間で80万円以上が“行方不明”になっていました。
夫:「えー、なんでないの?そんなに使っている気がしないんだけど」
妻:「ほんとうにわからない…。買っているつもりなんてないのに」
顔を見合わせるお二人。
しばらくしてようやく出てきた言葉は──
「ネット通販で結構ポチッしていたかも」
リアル店舗でお財布から現金を出すのと違い、ネット購入やサブスクは「買った感覚」が残りにくいのです。
「セールだからお得」「送料無料にするためにもう1品」──そんな“小さな支出”が積み重なっていました。
データが示す“無意識の消費”
実は、こうしたケースはこのご夫婦だけではありません。
株式会社スマートバンクが2024年10月に実施した「日本全国で発生する“無駄遣い”に関する調査」(監修:ニッセイ基礎研究所)によると──
1世帯あたりの無駄遣い額は年間104,292円。
無駄遣いの多い項目トップ3は「食料」「教養・娯楽」「保健医療」でした。
さらに、74.5%が「無駄遣いを節約したい」と回答。
節約して実現したいことの上位には、
1位「貯金」(64.3%)、2位「資産形成(NISA・株式投資・不動産投資)」(31.1%)、3位「旅行」(30.6%)が挙げられています。
つまり、多くの家庭は「気づかぬうちに使ってしまう現実」と「将来に備えたい理想」の間で揺れているのです。
また経済産業省によるとキャッシュレス決済比率が2024年には42.8%の過去最高となり、「現金が減らない分、使った感覚が薄れる」という傾向も裏付けられています。
シミュレーションが突きつけた衝撃
このご夫婦がシミュレーションを見て愕然としたのは、今のままだと 老後資金が73歳で底をついてしまう という結果でした。
夫:「えっ、そんなに早く?」
妻:「73歳で貯金ゼロって…どうやって生活すればいいの?」
《 見直し前の金融資産残高の推移 》
50歳夫婦、世帯年収 約1,000万円、毎月の生活費38万円
75歳までの住宅ローン返済、自動車買い替え予定あり
5万円削減で10年以上の安心
ネット購入を控え、サブスクを整理。
使途不明金80万円のうち、年間60万円(月5万円)の削減を行った結果──
資産寿命は73歳から84歳に延びました。
《 見直し後の金融資産残高の推移 》
毎月の生活費を5万円見直し(38万円/月→33万円/月)
妻:「えっ、たった5万円減らすだけで?10年以上も延びるなんて!」
夫:「そんなに変わるのか…ちょっと本気でやってみようかな」
さらに、この5万円を投資に回した場合──
毎月5万円を65歳まで15年積み立て、年利3%で運用すると 約1,300万円 に。
資産寿命は 92歳 まで延びる結果となりました。
妻:「買ったことを忘れていて、気づけばお金が減っているのに、頭の中は老後の不安ばかりだったんですね…」
夫:「“そのポチッ”が、未来を削ってたんだなあ」
無意識の消費を抑える3つの視点
“そのポチッ”自体がすべて無駄ではありません。
ただ、振り返ったときに後悔や不安につながる支出は、未来の安心を削ってしまいます。
無意識の消費をなくすのは難しいですが、少し意識を向けるだけで未来の安心につながります。
1.衝動的に買わない
「本当に必要?」と一度立ち止まり、時間を置いてから判断。
2.支出を振り返る
カード明細や家計簿アプリで、この支出が必要だったか振り返る。
3.貯蓄額を把握する
「いくら貯められるか」に注目。
1年で貯蓄できる数字(運用に回せる額も含む)を把握する。
さいごに
限られたお金の使い道が、覚えていないものにどんどん消えているとしたらもったいないですね。
それで老後に不安を抱えているなら、なおさらです。
実際にこのご夫婦が3ヵ月後に来訪されたとき──
使途不明金はほぼなくなり、食費などの生活費も工夫して抑えられていました。
そして何より、お二人の表情は以前よりずっと明るく、前向きになっていたのが印象的でした。
「やればできる」「未来につながっている」という感覚が、家計の数字以上に大きな安心をもたらしていたのです。
老後の不安を減らす第一歩は、“日々のお金の使い方に意識を向けること” から。
まずは、先月のカード明細をチェックするところから始めませんか。
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出典
- 株式会社スマートバンク「日本全国で発生する“無駄遣い”に関する調査」(2024年10月、ニッセイ基礎研究所監修)
- 経済産業省(2025)「2024年のキャッシュレス決済比率を算出しました」
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コラムの一部または全ての無断転載を禁じます。
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