COLUMN
10年後のあなたが変わるFP情報
2024.04.18
年金・老後
テーマ:
「退職金の受け取り方はどう選ぶ?自分に合った選択をするためには」(2024年4号)
10年後のあなたが変わるFP情報 (2024年4号)
こんにちは。ファイナンシャル・プランナーの八木澤浩司です。
私は、退職後のライフプランについてセミナーを担当することが多いのですが、受講された方から一番質問が多いのが「年金」、次に多いのが「退職金の受け取り方」です。
退職後のライフプランの個別相談でも、特に退職を間近に控えた方から多い質問は、「退職金の受け取り方を決めなければいけないが、どう判断したらよいのか?」です。
退職する際に会社に提出しなければならない書類はいろいろあると思いますが、その中の1つに勤め先が導入している「確定給付年金(DB)」、「企業型確定拠出年金(企業型DC)」などの受け取り方を決めなければならないことです。いざ退職を目前にして、いきなり突きつけられる大きな選択の1つが退職金の受け取り方です。
今回のコラムでは、退職金の受け取り方の違いによるメリット、デメリットを見ていきたいと思います。
●退職金の受け取り方は大きく3つ
勤め先が導入している制度によって異なりますが、ここでは「確定給付年金(DB)」、「企業型確定拠出年金(企業型DC)」を導入している企業の場合で見ていきます。
退職金の受け取り方は、大きく以下の3つです。
① 全額一時金で受け取る
② 全額年金で受け取る
③ 一時金と年金を併用する
●退職金を一時金で受け取るメリット、デメリット
メリット:税負担を減らせる(退職所得控除の効果が大きい)
デメリット:管理がしにくい(使いすぎる可能性がある)
退職金を一時金で受け取った場合は、退職所得となり税制上の優遇があります。退職所得の計算方法は以下です。
退職所得=(収入金額―退職所得控除額)×1/2
【退職所得控除額の速算表】
(例)勤続年数38年の方が、退職金を一時金として1,500万円受け取った場合
退職所得控除:800万円+70万円×(38年―20年)=2,060万円
1,500万円<2,060万円 ⇒ 退職所得控除額の方が大きいので、課税されない。
退職所得控除額は勤続年数が長ければ長いほど増えます。もちろん退職一時金の金額にもよりますが、一般的には退職金に税金がかからない、もしくは、それほど大きな額にならない方が多いのではないかと思います。また、一時金で受け取り、管理しながら資産運用をしていくという選択肢もあります。
ただし、一時金で受け取ると、「このくらい使っても大丈夫」と予定よりも使いすぎる可能性もありますので、自分で資産管理をしていくことが大事です。
●退職金を年金で受け取るメリット、デメリット
メリット:家計管理がしやすい(定期的な収入として見込める)
デメリット:所得税、住民税、社会保険料がアップする可能性あり(収入が雑所得となる)
年金で受け取った場合は、定期的に入ってくるお金になりますので、家計管理がしやすいでしょう。また、受け取っている期間中に運用されますから、受取総額は一時金で受け取るよりも多くなる可能性があります。
ただし、デメリットとしては、受け取った年金は収入となりますから、所得税、住民税、社会保険料がアップする可能性があります。なお、所得税、住人税、社会保険料がいくらくらいになるのかは、公的年金額や収入の有無、家族構成などによって一人ひとりで変わってきます。
勤め先によっては、退職一時金と退職年金の併用ができる場合もありますので、自分に合った受け取り方を知りたい方は、退職後の収入、支出がどうなるのかを含めて、ライフプランキャッシュフローを作成してみて判断してみると良いでしょう。
●退職一時金の受け取り方は、タイミングも注意。
今回は、退職金の受け取り方について、一時金か年金か、という点でお伝えしてきましたが、勤め先によっては、DBやDCとは別枠で、定年退職時に退職一時金という制度がある会社もあると思います。その場合は、DB、DCを一時金で受け取るタイミングによって、退職所得の課税ルールが異なりますので、こちらも注意しておきましょう。
退職後の生活については、定年退職時期が近くなってから考え始める方が多いと思いますが、ライフプランを作ることはお金の面だけでなく、退職後に自分がやりたいことを考えるきっかけにもなります。自分のセカンドライフをイメージするためにFPに相談してみてはいかがでしょうか。
※当コラムの著作権は(株)FPコーチングLaboに帰属しています。
コラムの一部または全ての無断転載を禁じます。
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